SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

マニラの物語 6

気持ちが落ち着かないまま、夜を迎えた。先ほどのラモスと一緒にフィリピン料理の店に行く約束をしていたので、仕事の終わる時間にアイム・ハングリーで待ち合わせをした。

「やられたよ、両替で。」

「えっ?いくらだよ?」

「2500ペソくらいかな…。」

「ああ、まったく!で、どうした?」

「警察に行ったよ。」

「マニラの警察はいつも賄賂を要求するからね。あんまり信用しちゃだめだよ。」

「けど、明日来いだって。賄賂あげないといけないのかなあ…。」

余計面倒な気分になってしまったが、とりあえず何も考えずにフィリピン料理店へ行くことにした。昨日からマニラの食堂で食べているのはみなまずい…というか、こんな汚い街で作っている食事なんて大丈夫なのだろうかとも思う。しかし、ここは結構きれいだ。ラモスも「こんなお店にはなかなか来れないよ」と、嬉しそうだ。お勧めのメニューはチキン・アドボ。鶏肉の煮物だ。そして、バンブー・アドボ・ライス。竹筒の中で炊き込まれたチキン・ライスである。竹の匂いが香ばしいこの料理はとても気に入った。昼間の闇両替事件のことはしばし忘れ、ペコペコのお腹を癒した。