翌日。約束した通り警察へ行き、昨日会った私服警官と共に現場へ行くことになった。もちろんあの老婆はいない。逃げたのか…と、警官は現場の隣りの店に入っていった。若い女性がいたが、何やらタガログ語で話しが始まった。いったい何を話しているのだろうか…。
すると、彼女が私に言ってきた。
「助けて欲しいですか?私が2000ペソをあげましょう。」
知らないこの女性がなぜ私にお金をくれるのか…。私はすぐに返事が出来なかった。「捜査の手続きをするのは色々と大変だ。この女がくれるっていうんだから、これでおしまいってのはどうかい?」と私服警官は言う。まったく狐に摘まれたような気分である。また裏に何かあるのだろうか…。2000ペソでは500ペソほど損したことになるが、まったく戻って来ないよりはマシだ。プロセスがどうであろうと、お金が返ってくれば自分の問題は解決する。
「どうですか?私が助けてあげますよ。」とその女性は繰り返す。
ミスター・アジズも「それがいいよ」と言うので、お金を受け取ることにした。しかし、これで本当に終わったのか…。マニラの警察はマフィアとも通じているという噂を聞くし、我々は大事をとり、すぐに宿には戻らず、ハリソンプラザへ向かった。ミスター・アジズは「宿を変えた方がいい」とも言う。そうするべきなのか…。
ハリソン・プラザのファストフード店では、いつもの通りラモスが元気に働いていた。
「ラモス!」
「おおう、タカシ!ミスター・アジズ!」
紅茶を注文した。「昨日のお金はどうなった?」とラモス。私は一部始終を話した。
「それはちょっと危ないなあ…。けれど僕にも分からないな。とにかく、もし何かあったら、すぐに私に電話してよ。僕の店のボスは警察の偉い人に通じているからね。」
「マニラの警察って、そういうものなの?」
「警察にも色々あるからね。僕の店のボスには、中央警察のトップがついているから大丈夫!」
「そうか、ありがとう。とりあえず様子を見て、危険になったら連絡するよ。」