インド北部、ラダック地方の中心都市、レーには1週間滞在の予定で来た。初日は、高山病の心配もあり、おとなしく部屋で休んだが、2日目には身体もだいぶ慣れた。5月のデリーは猛暑だが、ここはまだ寒い。部屋の中にいるより、陽の当たる庭の方が暖かいので、外でくつろぐことにする。
ラダックにはチベット仏教のゴンパ(僧院)がいくつかある。それは街中ではなく、人里離れた場所。レーからおよそ19キロ離れたところにあるティクセ・ゴンパは、標高3600メートルの山の上にある。外観がラサのポタラ宮にも似ていることでも知られているゴンパだ。
ゴンパでは毎朝、修行僧たちの祈りがある。それを録音するため、早朝5時、機材を抱え、チャーターした車でそこへ向かった。
小さな鐘の音と共に、赤い袈裟を来た僧侶たちが一斉に声を出す読経。声と声が重なり合い、また違う音を発するその音空間は実に神秘的だ。ところどころで叩かれる太鼓、シンバル、そして、チャルメラの音。延々と繰り返される祈りと共に、今日の陽が昇る。(2005年5月28日)