SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

オックンチュラン・カンプチア 11

2月26日(金)
 泊まったできかけのホテルは快適であった。1階部分のレストランになるであろう空間はまだ何もなく、がらんとしている、私の部屋は2階の道に面したところだが、すべて新品でペンキの匂いがする。
 コンポンソムの街の通りは舗装もきちんとされていてきれいだ。しばらく散歩していると、フランスパンを売り歩く子供がいた。まだ暖かくていい香りがする。ひとつ買い、練乳をかけて食べる。美味しい。
 市場を散策する。プノンペンにはない特別なものを探すが、それほど面白いものはない。ここでもまたコーヒーを買った。ここのコーヒーもなかなか美味しい。同じく練乳を入れて甘くして飲むものだ。これだけ美味しいのに、いわゆる「コーヒー」と「ネスカフェ」は違う風に売られており、「ネスカフェ」の方が高級品として幅を効かしている。屋台では「コーヒーにしますか?ネスカフェにしますか?」と聞かれる。
 豚の形をした赤と黄色の焼き物もある。貯金箱に使うらしいが、カンボジアにはコインがない。お札を入れるのだろうか。けれども、大きくて格好もあまりよくない。後で聞いたら、プノンペンにもあるという。この街ならでは、というのは特にみつからなかった。この市場でスウェーデンから来たカップルと出会い、意気投合。一緒に市場をまわっていると、真っ赤なスープのラーメンを売っているのを見つけるた。美味しそうなので食べることにした。色の割には辛くない。スウェーデン人のおねえさんも抵抗なく食べていた。
 しばらく市場をまわった後は、午後、また彼らの宿に遊びに行くということにして、一時別行動。私は昨晩の屋台のおじさんの家へ行くことにする。ホテルまで迎えに来てくれた。夜、おじさんが屋台を出している通りの奥の方を入ってしばらく行ったところ。木造の決して裕福ではないが、小綺麗で小さな家に案内される。家の中では奥さんにがすでに豪華な食事を用意していた。私が大好きだと言った例のカンボジアスープを用意していてくれた。それから海の幸、蟹もある。暑い暑いと、おじさんは服を脱ぎ、上半身裸になって床に座る。「さあ」とビールも出してくれて、最高のもてなし。私はノン・アルコール派なのでビールは飲めないが、ルートビアーで乾杯。おじさんたちの子供もやってきて一緒に食べる。私にはおじさんたちにあげるおみやげも何もないが、日本から持ってきた永谷園のお茶漬けの素があったので差し上げた。
 色々と語りつつ、お腹いっぱい、大満足。しかし、こんな私のようなどこから来たか分からない者を、こんなにももてなしてくれるなんて、本当にどうもありがとう。
 結構長い時間お邪魔したが、おじさんの家を後にし、スウェーデン人カップルの宿を訪ねることにした。民家の2階に上がっていったところで、結構小綺麗なところだ。泊まっているのは彼らだけだった。20ドルとのこと。「高いねえ」といっていたが、私の泊まっている辺りのホテルはもっと高いので、こんなものかと思った。蚊帳を吊った部屋でリラックス。高台にあるので、2階から外を眺めるととても美しい。そばにジャック・フルーツの木が生えている。一見普通の木の幹に、大きな実がどーんとぶらさがっているのにはとても不思議な感じがした。
 さて、昨日電車からも見えたが、ここの海岸はとても美しいらしいので、早速行くことにした。そこら辺のバイクを捕まえて後ろに乗って行く。我が田舎の沖縄ほど美しくはないが、白い砂浜にまさにリゾートといった感じの綺麗な海辺で夕日を眺める。結構立派なホテルもある。ここはUNTAC兵士の保養所ともなっているらしい。海岸にはシーフードを売る屋台があって、美味しそうだったが、昼にお腹いっぱい食べたのでやめにした。
 スウェーデン人カップルと別れ、ホテルに戻り、シャワーを浴びてから再び外出。おじさんの屋台に行ってそこで夕食。おじさんの作る焼きそばがとても美味しい。今日はPKOとして派遣されている日本の自衛隊一行もやってきた。やはりこの街に保養に来ているとのことだった。PKOではないが、日本人のNGOボランティア(テレビでも大々的に報道された中田さんといったか)が2週間ほど前にコンポントムという街で何者か(クメールルージュと言われている)によって射殺されたばかりの政情不安の中。そういったところに向かう彼らは、私ともそれほど年齢差はない若者。「カンボジアのためにお勤めご苦労さまです」と話したが、逆に「ひとりでこんなところまで来て大変ですねえ」と言われた。
 夜の街を散策するが、色々な屋台が出てとても賑やか。街にはファミコンを並べたゲームセンターもあり、子供達が遊んでいる。何やら賭博のようなことをしているおっちゃんたちも。昼間、市場で小学生用のカンボジア語教科書を買ったので、それで文字を少し勉強。屋台でコーラでも飲みながら、そばのおねえさんに発音を教えてもらう。クメール文字は基本となる文字に、色々と記号のようなものを加えてひとつの文字を形作る。タイ文字やビルマ文字にも構成が似ているが、それよりも数段複雑という印象がある。けれども、ある程度は覚えた。教科書も色々あるが、私の買ったのはカラーで印刷もきれいなもの。日本の曹洞宗のボランティアが作った教科書のようだ。以前のカンボジア製の教科書はとても見にくいものだった。
 しばらく散策した後はおじさんの屋台に再び戻りリラックス。昼は本当にごちそうさま。しばらく座っているとインドネシアから来たUNTAC兵士もやってきた。再びインドネシアの雰囲気。インドネシア人はカンボジアでもいつもの陽気なノリであった。
 さて、今日は色々とまわった。少し疲れた。そういえば、少し寒気もしてきたので、早めにホテルに戻ることにした。