SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

遥かなるバジョの村、カバルタン 2

リサーチのため、初めてワカイの港に降り立った7月。「べントール」と呼ばれるバイク・タクシーが客引きをする中、まずは情報集めをしたいので、ひとりにさせてもらいたい…と、歩いて行くのだが、ピタッとくっついてくる男がひとり。宿泊先を色々と勧めてくる。自分で決めたい旨、言うのだが、 それでもひたすら着いてくる。どうせ金目当てなのだろうと思い、宿を決め た後、チップを渡そうとすると、「いらない」という。彼の名はアロマン。ツー リスト・ポリスとして働いているのだそうだ。とにかく金はいらないと、チップを受け取らなかった。その彼が後に、私の子分のような存在となる。彼には色々手伝ってもらった。

トゲアン諸島の中で、美しい珊瑚礁が残っているのは、北方の海岸で、西洋 人が訪れるリゾートがその辺りに集まっている。試しに行ってみたが、見事 に西洋人ばかり。彼らは日本人とは違って1週間から1ヶ月、滞在するとい う。サンゴ礁は、パプアのラジャ・アンパットがインドネシアで最も美しいが、 有名すぎるので、少しマイナー(秘境?)な、トゲアン諸島の海を好む人も 多いそうだ。
リゾートも悪くないが、やはり街の方が便利なので、ワカイにあるアロマン の親戚が経営する小さなコテージに居を構えた。エアコンなし、扇風機のみ の小さな部屋で、素泊まり1泊10万ルピア ( 約 850 円 )。隣りの民家の奥が、近所の人たちの食堂になっていて、おばさんの日替わり メニューがある。ただ、オカズの肉や野菜は辛い味付け。島なので、本当は 新鮮な魚を食べたいのだが…。港近くの市場では、毎朝、新鮮な魚が売られる。そこで、マグロの子供だと いう魚「パニパニ」を1匹5000ルピア(約40円)で購入し、近くの食 堂で焼いてもらうことにした。普通は油を塗って焼き、甘い醤油で味をつけ るのだそうだが、それは遠慮させてもらいたい。やはり、味付けは塩だけで…。店のおばさんは「それじゃ美味しくないよ」と言い張るが、しばらくして焼 きあがった魚は、思った通り美味であった。日本人にはこれがいい。