SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

オックンチュラン・カンプチア 15

3月2日(火)
朝。まだ完治したというわけではなかったが、かなり良くなったような気がする。昨晩は良く眠れた。出発の支度をして鞄とともに下に降りる。キャピトル・レストランで紅茶を飲んでいると、バイクのおっちゃんが約束の時間にやってきた。一緒に紅茶を飲み、しばし会話。「あー、昨日はつらかった」と。おっちゃんは日本語も結構覚えた。英語もかなり。しかし、これ以上勉強したところで、それが収入に跳ね返ってくることはほとんどない。これが現状だ。けれども、おっちゃんの一生懸命な姿には感銘する。
しばらくして出発。おっちゃんのバイクの後ろに乗り、いろいろと喋りながら。空港ではおっちゃんに残った細かいリエル紙幣を全部あげ「また来るよ」と約束して別れた。でも次はいつ来れるかな。
カンプチア航空のボーイング737はものすごく豪華な乗り物のように感じた。昨日の今頃は、まだコンポンソムを出た頃で「戦い」の状態だった。そんなことがすべて夢のように思えてならない。今、飛行機に乗ってバンコクを目指す。とりあえず大丈夫だろうと、機内食も口に入れた。
バンコクに着いてみると、大都会であった。そして平和な感じがした。飛行機で1時間も飛ばないという近距離だが、状況はこんなにも違うのだった。
はじめは思いつきで行ってしまったカンボジアでの2週間。最後はかなりつらかったが、思い起こすととても楽しかった。この国では実に様々なものを見聞きした。初めて出会うような感動がいくつもあった。何といっても巨大なアンコール・ワットのあの荘厳な風景は一生忘れないだろう。そして、元気な人々との出会い。現地の人々と話し、交わることができなければ、旅などしていても面白くない。それから、こんな国にやってくるキャピトル・ホテル周辺のバッグパッカーたちも、みなひとくせふたくせあって面白い。観光客(というか貧乏旅行人)としてこの国に来るとそう思うのだが、そんな時、日本では「カンボジア情勢悪化」などとニュースをやっているらしい。どこでテロが起きようと、こちらでは噂でしか知る由がない。確かに危険なのかもしれないが、ここは昔からそんな状態なのだから、怖がってばかりでは生きていけない。カンボジアには笑顔がある。活気がある。やる気がある。そんな国がどうにか治安を回復し、良い時代を早く迎えられるよう願ってやまない。

(おわり)