SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

マニラの物語 2

昼過ぎ、起きてみると雨があがっていた。窓から辺りの様子を窺うと、米軍基地に隣接した沖縄の街に似たような雰囲気。私は以前、沖縄に長く住んでいたので、どことなく懐かしい感じがした。エルミタ地区は、もともと大きな繁華街で、以前はゴーゴー・バーが連立し、パンチ・パーマをかけた日本人の、それらしい男達が集まるところでもあった。というわけで、日本料理やラーメン屋、日本食材店もある。

さて、まずは両替をしなくてはならない。空港の両替はどこの国でも交換率が悪いのが一般的なので、ほんの少しだけに留めていた。アメリカン・エキスプレスのトラベラーズ・チェックを持っていた私は、地図でそのオフィスを探す。と、すぐそばにあることが分かり、そこに行くことにした。

アメリカン・エキスプレスのオフィスは、エルミタのうす汚れた雰囲気とは違い、新しくきれいな建物の中にあった。順番を待ちつつソファーに座る…と、となりの外国人男性が私に話しかけてきた。

「どこから来たんですか?」

「あ、日本の東京からですけど…。」

「日本はきれいな国ですね。私も行ってみたいと思っているんですよ。」

彼はアラブのバーレーンから、休暇で来たというミスター・アジズ。航空機の整備技師で、数ヶ月に1度、長期の休暇があるのだという。さすがは産油国の人、うらやましい!色々と話しているうちに意気投合し、彼と一緒にマニラの街をまわることにした。私も彼もマニラは初めて。どこに行ってよいのか分からないが、まずは近くにある駅から高架電車LRTに乗り、街を眺めることにした。

雑然という言葉にふさわしい街並みを見下ろしながら、すいすいと進むLRT。ところどころ高いビルもあるが、巨大な田舎といった様相のメトロ・マニラを眺める時、ここにはきっと色々な人間物語があるのだろう…と思うのであった。

東南アジアの国々の街を歩く時、私が真っ先に行くのはチャイナ・タウンである。最寄りのキアポ駅でLRTを降り、そこから歩いて行く。チャイナ・タウン入口にはドラゴンの彫刻が施された門が建っている。この周辺の人の顔は確かに中国風ともいえるが、誰もみなタガログ語を喋っている。と、よろよろのおじいさんが、中国語の新聞を読んでいた。やはりここはチャイナ・タウンなのだとやっと実感。チャイニーズ・ポップスのカセット屋もあった。けれどもすべて海賊版であった。

チャイナ・タウンをひと通りまわった後、ミスター・アジズに連れられ、私の泊まっている宿からそう遠くないハリソン・プラザというショッピン・センターへ行く。マニラの庶民の足、ジプニー(乗合い自動車)に乗って行く。「バヤド(おいくら?)」と言い、行き先を告げてお金を運転手に渡す。後ろの方に座って、運転手まで手が届かない時は、隣りに座っている人にお金を渡すと、そのまま人伝いに運転手まで届けてくれる。お釣りがあれな、また人伝いに返ってくる。自分もマニラの住民になったような気分だった。