SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

マニラの物語 3

ハリソン・プラザに到着すると、入口のところで銃と金属センサーを持った警備員による持ち物検査がある。東南アジアの他の国と比べて、マニラはこれほどにも怖いところなのかと緊張するが、ここの人々にとっては、ごく普通のことらしい。

入口、左手にある「アイム・ハングリー」というファスト・フード・ショップで休憩することにした。私は紅茶を頼んだ。

ミスター・アジズは、気軽に店員に話しかける。

「マイネーム・イズ・ラモス!」と店員のひとりが会話に加わった。

「へえ、ラモスって大統領と同じじゃないか。」

「そう、同じ。けれど身分はまったく違うね。」

ラモス君はまだ若く見えるが、これでも3人の子供の父親である。家族を養うために毎日ここで働き詰めだそうだ。

「毎日って、休みは?」

「休みなんてないさ。養育費を稼ぐのに、休んでなんかいられないよ。」

彼はフィリピン人の労働条件について詳しく説明してくれた。本当にこんな状態でやっていけるのだろうかと思うほどの低賃金だが、みんな頑張って生活している。けれども、彼らは暗くない。いつも明るくエンジョイしながら生活するのがフィリピンの良いところなのだそうだ。

さて、暗くなってきたので、いったん宿に戻ることにする。ミスター・アジズのお勧めのバーが私の宿のすぐ横にあり、夜、再びそこで会うことにした。