SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

遥かなるバジョの村、カバルタン 3

アロマンに話を聞くと、トゲアン諸島にはバジョの住む村が8つあるという。その中で最も規模が大きいのがカバルタンという村。翌日、そこへ行くことにした。ツーリスト・ポリスの仕事は放っておいていいのか…彼も一緒に着いてきた。聞くと、アロマンの祖母も実はバジョで、彼もバジョの言葉を少し話せるそうだ。小さなボートで片道1時間50分ほどかかった。島と島を繋ぐように木の渡しが続き、左右それぞれ海に向かってせり出すように家が作られている。高台から見ると、円を描くように集落ができているが、それがとても美しく見える。

顔を合わせた村の人は、みなニコッと微笑んでくれる。インドネシアのどこの村でもそうだが、人と会ったら挨拶を交わす。かしこまったものでなくてよい。ニコッと微笑むだけで、心が通じ、「他人」から「知り合い」に変わるのだ。村長の家を探し、まずはご挨拶。この村では数少ない、大学卒の若手村長シャイフルさん。彼もバジョだ。カバルタンのことを色々と質問した。この村の良いところを聞くと、隣人が助け合って生活していることだという。お金がないと助けてくれない都会人と違い、ここの人は、みな家族のような関係。家を作る時も、橋を作る時も、近所で助け合いながら作業するそうだ。その一方で悪いところは、経済的に恵まれていないにもかかわらず、お金を手にすると、すぐに使ってしまうことだという。ここでは週1回、火曜日に市場が開く。物資が載せられた船がワカイからやってくるのだが、そこで、稼いだお金を一気に使ってしまうのだそうだ。アンパナとカバルタンとを繫ぐ定期船も1日おきに出ているが、アンパナに向かう船には、売りに出す物 がほとんど積まれていない。しかし、戻って来る時には、むこうで買い物した物資で満載となる。うまく言えば、計算深くなく、困った人がいればすぐに助ける、愛のある人たち、ということだろうか…。