SOUTH SEAS VOICE WORKSHOP

マニラの物語 1

早朝3時、バンコク発パキスタン航空。オーバー・ブッキングのため、ファースト・クラスに乗った。ラウンジは使えなかったが、機内は一応、ファースト・クラスのサービス(そんなに良いものでもなかったが…)。これでもか、というくらいの旅客と荷物とを乗せ、同機はフィリピンの首都マニラへ飛んだ。

3時間半弱でマニラのニノイ・アキノ空港に到着。入国審査を経て外に出ると、雨だった。古ぼけた空港の建物が薄暗い雰囲気を増強させる。早速、たむろするタクシー運転手に呼びとめられた。そして、安宿の集まるエルミタ地区マビニ通りを目指す。100ペソで交渉し、成立したにも関わらず、走り始めてから150ペソだと運転手は言う。マニラの空港タクシーのタチの悪さは噂に聞いていた。ここであまり焦ってもしょうがない。運転手が「ワンハンドレッド・フィフティー」と言う度に、私は「ワンハンドレッド」と言い返す。しかし、ちゃんと目的地に行ってくれるのだろうか…。少し心配になってきたが、常に自分を強く保っていなければ負けてしまう。

東南アジアは色々な国をまわったが、フィリピン行きはなかなか実現しなかった。地理的にも他の国と離れているので、近くの国をひとまとめにまわるなど、できないからである。けれども、今回はバンコクから日本に帰る途中、ストップ・オーバーできるチケットだったので、実現したのだ。

宿は旅行ガイドで目ぼしをつけていたエルミタ・ツーリスト・イン。1泊500ペソ(約2千円)で、私にしては豪華な宿である。エアコンもある。しかし、スイッチを押すと、けたたましいほどの音をたてる。うるさくてかなわないが、ジトジトしたなまぬるい空気の中にいるよりはいい。深夜便で疲れた身体をホット・シャワーで癒し、しばらく睡眠をとることにした。